※捏造入ります(女型未出演、又、今回の調査で出演なし)
壁外調査。巨人という道の生物が蔓延る壁の外へ出て人類の壁外進出に向けての足がかりを探る調査が行われるとが聞いたのはその一週間前だった。
今回、記憶を失ったままの彼女を作戦に参加させて良いのか疑問の声はいくらかあがったが、その点で問題は無い事をエルヴィンだけではなくリヴァイまでもが主張したことで、晴れての調査参加が決まった。
「油断するなよ。」
記憶を失ってから必要な知識を叩き込んだり、訓練をしたものの、乗馬については間に合わなかった為、は小太郎の後ろに乗っている。
「はいはい。」
「・・・コタロー、お荷物がいちゃ、動き難いだろうが頼んだ。」
「お荷物ぅ!?」
聞き捨てなら無い言葉に言い返すが、馬が動き始めたので慌てて小太郎にしがみつく。
「あーぁ、早く立体機動に移らないかなー。馬って嫌い。」
慣れない揺れに、眉を寄せながらも、開いた門から出ると荒れた町が広がる。
小太郎率いる先陣をきる隊にいるは、速度を速めた馬にうんざりとため息をついた。
「主、町を抜けるまで、降りて大丈夫。」
「え、ほんと?」
頷くと、は嬉しそうに笑って馬から屋根に飛び移ると支給された硬質スチールを引き抜いた。
小太郎が指す方角を確認して屋根を蹴りつけると、まっすぐに正面にいる巨人へと向う。
「えーと、項だったよね。」
気付いた巨人が手を伸ばしてくるので、その腕を足場にして飛び上がると、巨人の髪を引っつかんで項へ向う。
一瞬で崩れ落ちた巨人に、小太郎の班員はその少し後ろから歓声を上げた。
「主の後ろに、続く。」
そう、班員に支持を出して、小太郎は馬を走らせながら背後を見やった。
問題なく他の班が馬を駆る音が聞こえてくる。
ついで聞こえてきた左からの巨人の足音に、小太郎はそのまま進むように、そして馬を頼むと言い残して飛び上がると、左にいた巨人2体を始末した。
遠目に見えるのは右手の巨人に取り掛かるの姿。問題はなさそうだ。
屋根に着地した小太郎は駆け出すと、自分の馬を見つけて飛び降りる。
綺麗に一回転して馬に飛び乗った小太郎にその馬の面倒を見ていた男が驚いて肩を震わせるが、いつものことだ、と言い聞かせて心を落ち着かせている。
「班長、もうすぐ町を抜けますが、このまままっすぐ行きますか?」
「是。」
結局町を抜けても中々は戻って来ず、小太郎は分身に回収させた。
と、丁度左後ろから黒い煙弾が上がる。
「何アレ。」
「奇行種の、合図。」
「ふーん。」
ついで、中央のエルヴィンがいる辺りから、方向を示唆する煙弾があがった。
方向転換をするとき、少し軌道をずらせば先ほどの黒い煙弾が上がった辺りに行ける。
「主、黒い煙弾が上がった辺りに、向う。」
「先行って良いってこと?」
頷くと、は待ってましたとばかりに嬉々として馬から飛び降りた。
「ちょっとは残しちゃうかもしんないけど、宜しく」
人のことは言えないが、矢張りどういう状況であれ、からだを動かしていると気分が良いらしい。
生き生きとしているの姿に、苦笑しながらも、手綱を操った。
黒い煙弾が上がった辺りに行くと、そこには巨人と争う調査兵団の団員が数名いた。
木があるここでは立体機動で動いているらしいが、飛び跳ねることの出来る巨人に苦戦しているようだ。
(6体、か。)
先ずは手前の。と伝って移動していた木を降りると、2体地に伏せる。
そうしている間にも奥にいる巨人に1人団員が食われ、その初めて見る光景に眉を寄せた。
「よっと」
軽い掛け声と共にまた1体巨人の首を落として、は嘆息した。
生き残っていたのは2名だけだったのだ。
「馬は?」
巨人につかまれていたところを救出した二人は上手く身体が動かないらしく、は彼らを引っつかむと適当な場所に下ろす。
「分からない。多分、巨人に踏み潰されて・・・」
「・・そっか。」
困ったなぁ、と思いながら下を見下ろすとようやく小太郎たちが追いついてきたところで、2人を抱えたままは小太郎の方へ向う。
「2人助けたけど、動けないし馬もいないって。」
「・・・シアン、ユール、頼む。」
2人の班員に彼らを乗せるように頼むと、少し困った表情をした。
怪我人を乗せながら戦えるほど、壁外調査は甘くないのだ。
「小太郎が1人乗せて。私は1人抱えて走るよ。」
「・・・」
不服そうな顔をするが、そうもこうも言っていられない。
「命令ね。ほら、行こう。」
そう言われてしまえばこれ以上いう事も出来ず、小太郎は1人受け取って抱えると、馬を走らせ始めた。
「目的地までどれくらい?」
「1時間、くらい。」
それならどうにかなりそうだ。は男を抱えなおした。
「後ろに、救護班。連れて行った方が、良い。」
抱えながらでも問題なく動けるのは間違え無いが、抱えられている当人達はどうだろうか。暗にそれを指摘されて、は、じゃぁ2人連れて救護班の所に行ってくるといい始めた。
幸い、今回は一応小太郎の班員としてここにいるものの、彼女は班員の数として数えてはいない。
つまり、戦力的にも問題ないし、伝令などの各役割を担う人間も事足りている、ということだ。
「救護班は、エルヴィンの後ろ。」
「ん。」
は小太郎からもう1人の負傷者を受け取ると、円を広げた。結構距離はあるが、何とかなりそうだ。
「申し訳、ありません。」
抱えられている兵士が苦しそうに言う。
「いいよ。でも、今から移動するから、寝れたら寝てた方が良いかも。気持ち悪くなると思う・・・あ、吐くのだけはやめてね。」
そう言うが早いか、は抱えたままエルヴィンの気配を追って走り始めた。
「あー、明日筋肉痛になりそう。」
そう思いながら早速出会った巨人の足を蹴り飛ばして、走る。
2人抱えていると流石に両手が塞がるため、項を落とすのは無理だ。
「項を蹴り飛ばせば良いのかな。」
『あー、そりゃ、試したことねぇな。やってよーぜ!』
影の中にいるのであろうアポロの声が鈍く聞こえるが、はそれをすっかり無視した。
怪我人を連れた状況で実験に付き合う暇は無い。
しかし、巨人を引き連れて陣形の内部に行くのも不味い為、出会った巨人については一応陣形の外側に蹴り飛ばして修復に時間がかかるようにはしておく。
「ん、黒い煙弾は、奇行種だっけ。」
進行方向から黒い煙を見つけて、困ったなぁと呟く。
これ以上怪我人を見つけても抱え切れない。
が、その心配は無用だったらしい。
「・・何してんだ、てめぇ。」
黒い煙弾を上げたのはリヴァイの班だったらしく、恐らくリヴァイがささっと倒してしまったのだろう。
既に巨人の姿は見えない。
「怪我人を救護班の方へ連れて行こうと思って。」
それを聞きながらリヴァイは硬質スチールを鞘に収め、馬に乗る。
「帰ったら説教だな。」
「え、何で!」
人助けをしてるのに心外だ。と驚くと、さっさと行けと促され、後ろ髪を引かれつつエルヴィンの方へと向った。
救護班にたどり着くと、荷台に2人を横たえて、もその隣に座った。
後方を眺めているといくつかの班が見える。が、巨人とは交戦していないようでほっと胸を撫で下ろした。
「、暫くこのまま待機していてくれ。」
「了解。」
前方を駆けるエルヴィンが少しだけ速度を落としての乗っている馬車に近づく。
「しかし、無茶をする。」
「そうかな。」
良く分からない、と言う彼女に苦笑していると、前方から声があがった。
目的地である拠点が見えてきたようだ。
「あの塔に泊まるの?」
「あぁ。物資を置いて、周囲を調査したら帰還だ。余り長居はしたくないが、夜は何があるか分からないからな。」
日も暮れてきている。
此処は彼らにとって未知の領域だ。巨人が夜活動しないのは分かっているが、それ以外の何かがいないとは言い切れない。
「じゃぁ、小太郎と一緒に肉でも調達して来ようかな。」
「・・・言っておくが調理する場所等無いぞ。」
「え、じゃぁ、今日のご飯は?」
乾パン。と返ってきた言葉には思いっきり顔を顰めた。
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