朝、はすっきりと目を覚ました。
が、目に入った天井にあれ、と思う。
次いで、自分の体を包む暖かい何かに気づいて、ゆっくりと横を見た。
「・・・・?」
目に入るのはXANXUSの顔。
「ーーーー!!!」
昨日の晩のことを思い出して、は慌ててXANXUSとの距離をあけた。
広いキングサイズのベッドでは、結構距離を置いても、落ちることは無い。
「・・・」
XANXUSも目を覚ましたのか、が真っ赤な顔をして、距離を置いているのに気づいて眉を寄せた。
「・・・朝から何してる」
そう言って、ぐいと手を引っ張ると体制を崩したが膝をつくので、それを引き寄せた。
するとさらに顔を赤くする。
朝から動機が激しい、とは心臓を押さえた。
今まで、恭弥に邪魔をされ続けて、男性とのこういった触れ合いが皆無に近いにとって、いきなりのこの展開は心臓に悪いものに他ならない。
は、はぁ、とXANXUSの腕の中でため息をついた。
Incomplete Love Story #11
朝から憤慨したままコーヒーを飲むを前にXANXUSも呆れながらコーヒーを口に運んだ。
(酒を飲もうとしたらに奪われたので、仕方なしにコーヒーを飲んでいるのだ)
「だ、だって急に一緒に寝るだなんて・・・破廉恥ですよ、XANXUSさん。」
XANXUSは昨晩の押し問答を思い出して、何とも言えない表情をした。
これはこれは大事に育てられたようだ、と。
「ボスが破廉恥か、面白れぇぜ。」
朝食を一緒に取っていたスクアーロが笑うと、ぎろりとXANXUSが睨んで口をつぐんだ。
「それよりも、今日あの雲の守護者と会うんだろぉ?どうすんだぁ?」
気を取り直して、に尋ねると、困ったように微笑んだ。
XANXUSも気になるのか、静かにの返答を待っている。
「とりあえず、恭弥に話したいと思います。」
「あの様子じゃ、話なんて通じねぇんじゃねぇかぁ?」
ううーん、と考えて、は苦笑して「そうかもしれませんね」と頷いた。
「・・・一階に客間がある。そこで話せ。」
「え?」
てっきり、ディーノの家に出向いて、と思っていたは驚いてXANXUSを見た。
「いるヤツを集めておけ。」
「マジかぁ?」
そう言いながらも、昨日の様子だと確かに必要かもしれない、とスクアーロは頷いた。
今日はレヴィとベルがいたはずだ。
スクアーロは立ち上がると、電話を手に取った。
連絡を寄越せと今朝ディーノから電話があったのを放っておいたのだ。
電話で今日の段取りを話しているスクアーロを尻目に、XANXUSはを見た。
「隣に部屋を用意した。何かいるものがあったら言え。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
まだ、これから此処で暮らすのだという実感が湧かない。
それに、弟の手を離して、生活して行くということに少し不安もあった。
が、目の前の男性にそれを忘れさせる程惹かれているというのも分かっている。
色々な気持ちを振り切るようには立ち上がった。
「お部屋、見て来ますね。」
13:00。約束の時間。
部屋でXANXUSと待つは予想以上に緊張していることに気づいて苦笑した。
「・・・大丈夫か?」
「あ、はい。」
と頷いて、すぐに困ったように眉を寄せた。
「すみません。嘘です。」
そう言って落ち着けるように息をゆっくり吐いた。
「本当は、ちゃんと恭弥を納得させれるか、分からなくて、緊張してます。」
は隣に腰掛けるXANXUSにぎゅぅっと抱きついた。
昨晩と今朝はあんなに顔を赤くしていやがっていたのに。と場違いなことを考えながらXANXUSはその頭をぎこちない手つきで撫でる。
少しして、離れたは笑顔でXANXUSを見上げた。
「うん。大丈夫です。がんばれます。」
照れたようにえへへと笑って、は立ち上がった。
「XANXUSさんがいると、きっと喧嘩になっちゃうので、その・・・。」
窓の外に、黒塗りの車が見える。
到着したようだ。
「・・・・あぁ。仕方ねぇな。」
余り気は進まないが、仕方が無い、とXANXUSも立ち上がった。
がちゃりとドアが開くと同時に入って来たのは恭弥とディーノだった。
昨晩恭弥を言いくるめるのに大変だったことだろう。
は感謝の意を込めてディーノに頭を下げた。
「何頭下げてるの。早く帰るよ。」
やはり眉は不快感を示すように寄せられていて、は緊張をほぐすように息を吐き出した。
「待って、恭弥。話をしたいの。大事な。」
絶対嫌がる。
分かっているけれど、話さなければいけない。
の表情を見て、ディーノがまさか、と驚いた顔をしている。
しかし、すぐに笑顔に変わると、口ぱくで「がんばれよ」と伝えられるので、笑顔で頷いた。
それさえも気に入らない恭弥はの手を引いて連れて行こうとする。
「まぁ、良いじゃねーか。話、聞こうぜ。」
「・・・貴方には関係無い。」
きっと睨まれて、ディーノはぐしゃぐしゃと恭弥の頭をかき混ぜた。
「大事な姉ちゃんだろ。話ぐらい、聞いてやれよ。」
不満を顔にありありと浮かべながらも、恭弥はぐっと押し黙ると、を見た。
「どうしても必要なの?」
「うん。お願い。」
そう言うと、恭弥はため息をついて、ソファに腰掛けた。
あぁ、愛しの弟よ