既にギブスの無い足を見て、は自然と笑った。
目の前には処置を終えた医師がカルテに何やらかき込んでいる。
「もう問題は無い様だから、もう普段通りの生活はできるよ。」
「はい、ありがとうございます。」
えへへ、と笑っては礼をいうと立ち上がって診察室を出た。
幼馴染みシリーズ
話はすっかり変わるが、流川楓の人気たるや凄いものだった。
中学からこんな感じだったと言えばそれまでなのだが、入学して一ヶ月足らずで既に親衛隊なるものができていることには純粋に驚いた。
「すっごいねー。」
体育館にて、練習を見学しにきたいたは応援席で黄色い声援を投げかけている親衛隊を見上げて言う。
「うるせーだけだ。」
ベンチに腰掛けてバッシュの紐を直していた流川は不機嫌そうに言って、立ち上がった。
「まだ練習まで時間がある。久しぶりにやるか。」
そう言われてはやった、と立ち上がった。
スカートの下にはきちんとスパッツも穿いているし、問題は無いだろう。
「今度こそ楓に勝つ!」
一人意気込むに流川がボールを渡した瞬間、それは始まった。
いつもの決まりで始まりははオフェンス。流川はディフェンス。
余裕で構えている流川には突進するように突っ込む。
流川もに向かって走り、ドリブルしているボールに手を伸ばすが、は素早くボールを逆サイドに持って行って、ビハインド・ザ・バックで切り返すものの、それを見越していたかのように流川はぴったりと張り付く。
スピードは五分五分。
(スタミナは無いが足は速いのだ)
「うわーん、楓の馬鹿ー!」
抜こうにも抜けない。
始まったときに既にいた晴子と赤木と花道は二人の対戦を観戦していた。
「ちゃんって、バスケできたんだ・・・」
しかも、上手い。と素直に思う。
「ふんぬ〜 ルカワめ、負けろー」
隣で呪いの様に呟き続ける花道が気になるところではあるが、赤木は興味深そうに二人を見た。
「流川にとっては良い練習相手なんだろうな。」
開いての癖を知っているかのように動き回る二人をみて、相当二人での1 on 1をしていることが伺える。
「また負けたー!」
決死のジャンプシュートも身長差が手伝ってカットされて、ボールは流川の手に。
悔しそうには地団駄を踏んだ。
「暫く動いてなかったからな。少し体が鈍ってんじゃねーの?」
「楓が過保護で動かさせてくれなかったからでしょー?」
もーだめ、とは荒い息のままごろりと寝転がった。
「寝転がるな。皺がつく。」
流川は真面目な顔で言うと、の手を取って立たせると、お母さんよろしくスカートをはたいてやる。
「だって疲れたよー」
もーだめ。
というに流川は微かに笑って抱き上げた。
勿論親衛隊の悲鳴が起きるがそこは気にせずにベンチへと進み、そこに降ろすと、ベンチに置いておいた自分のドリンクを取り、に手渡す。
「だいたい、楓はおっきすぎ。昔は私と変わらなかったのに、ずるい。」
そうは言いつつも、礼を言ってドリンクを受け取るとごくごくと喉に流す。
「昔から俺のがでかかった。」
そんな言葉が聞こえて来ては慌てて口の中のドリンクを飲み込むと抗議するために口を開いた。
「嘘つきー!」
「嘘じゃねー」
むっと流川も反論するが、は嘘だと言い張るので、結局は流川が折れる。
いつものことである。
「まったく、またやってるの?あの二人。」
いつのまにか彩子が来ていて、二人を苦笑いしながら見ている。
「彩子さん・・・」
予想通り、元気の無い声にこればっかりは仕方無い、とぽんぽんと肩を叩く。
「ほら、そこの二人!いつまでもいちゃつてないで、そろそろ始まるわよ!」
彩子の声を聞いたは「だって」と笑いながら流川を見ると、頬にキスを落として送り出した。
いつものことである。
それに対してキスを送り返して流川はようやく立ち上がる。
これも、いつものことである。
「全く、いちゃいちゃしやがって、けしからんですな、晴子さん!」
「え?・・・う、うん・・・」
これは諦めるしかないかもしれない、と晴子は足をぷらぷらさせてコートを眺めているを見て、溜め息をついた。
いつものこと