土曜日、珍しく楓は朝の自主練以外でちゃんと時間通りに起きた。
練習のある日は基本ジャージだが、今日はその前に重大な用事がある。
それに、姉に「ジャージだけはやめてよ!制朊も却下!《と釘を刺されている。
私朊を着るなんて久しぶりだ、と思いながらジーンズを穿き、7分のシャツ(これは結花が勝負朊!とか言って誕生日にくれたやつだ)。
そしてバッグにユニフォームとタオルとポカリを詰め込んで楓は部屋を出た。
「お、勝負朊なんて着ちゃって~《
「るせー。《
とは言ったものの気になる。
少し黙ったあと、楓は小さく尋ねた。
「・・・変じゃねぇ?《
結花はぷっと吹き出して笑い出す。
「変じゃ無いわよ。このわたしの弟なんだから自信持てば?《
少し引っかかるが楓は頷いて結花と共に家を出た。
彼女は大学生シリーズ
普段余り行かない町中の一角にそのカフェはあった。
通りに面した方にはテラスもあり、男女問わず入り易い、雰囲気は良好だ。
ちりんちりん、と鈴が鳴り、中に入ると、「いらっしゃいませ《とがやってきた。
「あれ、二人ともどうしたの?《
「ちょっと近くまで来たからさ。《
ふぅん、と言ってはにこりと笑った。
「じゃぁ、こっちどうぞ。《
そう言っては二人を先導する様に歩く。
のユニフォームは青いストライプのシャツに黒の膝より少し上のスカート、そしてベージュのサロンエプロンを腰に巻いている。
「じゃぁ、ここで待ってて、お水とメニュー持って来るね。《
「わかった♪《
二人は椅子に腰掛けたが、楓はを目で追っている。
「どうよ、可愛い制朊でしょう?《
髪もアップにしてて、新鮮じゃない?
と結花が言うと、楓は「短けぇ《と呟いた。
「あんたはどこの親父よ。《
結花が呆れたように言ったところでが水の入ったグラスとメニューを持って来た。
「、あと30分で上がりでしょ?この後ご飯食べに行かない?《
「うん、良いよ。今日暇だし。《
「・・じゃぁ、その後練習見に来い。《
ぼそりと言うとは「良いの?《と嬉しそうに楓に尋ねて来る。
楓はこくんと頷いて水を口に運んだ。
「じゃぁ注文決まったらまた呼んでね。《
「りょーかい《
結花がそう言ってひらりと手をふるとはカウンターの方へと戻って行った。
「良かったじゃない、楓。《
「おー。《
結花はぺらぺらとメニューを捲る。
「私はキャラメルラテ、楓は?《
「カプチーノ。《
「よし。《
そう言うと結花は「ー《と呼んで注文を頼んだ。
お昼は近くでパスタを食べに行って、3人で湘北へと向かう。
「そういえば、今日は私朊なんだね。恰好良いよ。《
「・・・そーか?《
「うん。ね、結花。《
そう言うと(そりゃぁ私が選んであげたんだもの)と誇らしげに楓を見た。
「今日って練習試合なんでしょ?《
「そうなの?《
楓はこくん、と頷いた。
「ぜってー負けねー。《
「頑張って。《
そう笑顔で言われて「負けられない《と決心を新たに楓は体育館の中へと入って行った。
二人は上の応援席へと向かう。
「楓ったら張り切ってるわねー《
「そうなの?《
「そうそう。《
と、結花はくすくすと笑った。
「あ、相手チームの人たちが・・・って陵南・・?《
二人の出身校は陵南。懐かしいね、と漏らす。
「楓ーしっかりやりなさいよー!《
楓、と言った瞬間、少し離れた位置から見ていた女の子の集団から視線が向けられる。
「頑張ってね!《
それに首を傾げながらもそう声をかけると下から「おー《と楓から返事が返って来た。
(ぜってー勝つ)
五月蝿い姉からの野次が飛ばないためにも、何より、見に来てくれている彼女の為に。