そのまま走って、2人の墓のある少し離れた町まで数時間だった。
随分と足も速くなったものだ。
幸いなことに天気は晴天のままで、ほっと息をつく。


「カヤさん、シュウさん、久しぶり。元気?」


そう言いながら、途中で買って来た日本酒を墓に惜しげもなくかける。


「・・死後の世界があるかどうかは知らないけど、美味しいお酒、飲めてると良いけれど。」


空になった瓶を地面に置いて、墓を見つめた。
5年間、短いような長い期間、娘として育ててくれた2人は、おおらかな人だった。
というか、おおらかでなければ、自分を受け入れたりなんか出来なかっただろう。


「・・私は、あんまり元気じゃないみたい。」


大きく溜め息をついてしゃがみ込む。
家族3人、とても仲が良かった。まるで、親友のような関係だった。


「2人とも、こんな天才児の私を置いて行っちゃうなんて、ほんと馬鹿ね。私、きっと大物になるわよ。」


此処に来たのはイタチと来て以来だ。
あの時は、泣く訳が無いなんて思ってたのにわんわん泣いてしまったのを覚えている。


「・・イタチも、馬鹿だわ・・。」


何だか、無償にイタチに会いたくなって来た。
今日、弟であるサスケに会ったからか、一緒に来た墓にいるからかは分からない。


少し迷って、は立ち上がった。


(・・今の私だったら、数十キロくらいいけるはず)


イタチは、まだ贈った髪紐を身につけているだろうか。













これが私の生きる道 #7















円をぐんぐん広げて行くと、見つけたその「もの」には久しぶりに、本当に久しぶりに念を使って移動した。
念のために持って来た刀。これを使う事にならなければ良いのに、という思いは見事裏切られて、移動した途端迫り来る何かには刀を抜いた。

金属音がぶつかり合う音。しかし、それにしては少し鈍い音がする。


「・・あ、いた。」


ぎりぎりと受け止める大きな刀は重いには重いが、そんなにきつくは無い。


「・・・・?」


目の前の大きな障害物の向こうに覗く、懐かしい顔。
はぐっと力を込めると、自分に斬り掛かって来ている誰かを吹っ飛ばした。


「!?」


吹っ飛ばされた本人は、まさか、と目を見開くが、宙に浮くからだが現実であることを知らせる。
見間違えでなければ、片腕で己を吹っ飛ばした様に見えて、鬼鮫は動揺を隠せないまま着地した。


「久しぶり、イタチ。元気?」


は刀を鞘に納めると、にこにことイタチに手を振った。


「・・よくここが分かったな。」


きっと勘の良い彼の事だ。
贈った髪紐に何かあることは気づいているのだろう。


「そんなに遠く無かったから良かった。あ、ねぇ、家ってこの辺?ちょっと1週間くらい泊めてくれない?」
「・・何?」


戸惑った様にイタチはを見た。


「・・一体なんなんですか、このお嬢さんは・・・」


鬼鮫が立ち上がって、を見た後、イタチを見た。


「ただの家出少女よ。一週間程お世話になるからよろしくね。」


変わりに答えたはくるりとイタチに向かい合って、紙袋を差し出した。


「これ、手土産。」


微かな甘い香り。
団子だ。


「家出とは、珍しいな。」


苦笑しながら印を組むと、アジトの入り口が開く。


「勝手に入れていいんですか?」


鬼鮫は普段慎重に動く彼があっさりと彼女を迎え入れようとしているのに、違和感を感じた。


「俺の部下、ということにしておく。いいか、。」


それが条件だと暗に示されて、はにっこりと笑って頷いた。
今は、とにかく自分の出自を全て知る人間といたいのだ。
風のうわさで、イタチが犯罪集団に入ったことは知っているが、ここに来る前も犯罪集団(盗賊)の中に身をおいていた為、余り違和感は感じない。















最後に彼女を見たのは2年前だろうか。
彼女は、余り外見上成長していないように見える。


「あぁ、念使いは身体の成長が余り早く無いのよ。」


それを視線から分かったのか笑いながら答えていると、鬼鮫がお茶をテーブルに二つ載せた。


「念使い、とは?」
は木の葉でも特殊な体術を使える人間。それを総称して念使いと呼んでいる。」


適当にごまかそうとしたら、イタチが助け舟を出して、は肯定するように頷いた。
鬼鮫はまだを警戒しているのか、探るような目を向ける。


「鬼鮫、少し席を外せ。」


その視線に気づいているイタチはため息をついてそう告げた。
勿論、素直に従いたくは無かったが、鬼鮫は渋々と自分の部屋へと向かった。


「で、何でまた家出をしたんだ?」


何だか、先生に怒られているみたいで、おかしい。
少し笑いながらは口を開いた。


「・・・そうね・・・何故かしら。ふと、シュウさんとカヤさんのお墓参りに行って、適当にぶらぶらする予定だったの。」


なるほど、だから、彼女は少し不安定に見えるのか。
己が木の葉にいない今、おそらくそこに彼女の真の理解者はいないのだろう。


「お墓参りに行ったら、イタチのことを思い出して、様子を見に来たってとこかしら。」


サスケを見てイタチを思い出したことはなんとなく言う気がしなかった。
最近、理由を探すのが難しい行動が多い気がする。


「・・・それに、最近アカデミーに行ってるんだけど、こう、退屈というか、面倒なのよね。私も里を抜けようかしら。」
「抜け忍は厳しいぞ。」


イタチの目を見ると、彼の目はじっと己を見つめていた。


「・・・私、集団行動って苦手なのよね。」
「身を守るためにも、里にいたほうが良い。」


これは、諭されているのだろうか。


「シュウさん、カヤさん、そして貴方がいない木の葉に思い入れは無いし。」


イタチは、ため息をついた。
のことは、例えるならば妹のような存在だと思っている。
出来るだけ危険な目には合わせたくない。
ただ、彼女が木の葉に執着を持っていないのも、性格上、一箇所に留まるのを好まないのも知ってはいる。


「・・・せめて、アカデミーは卒業するんだな。」


ようやく出てきた妥協案にはにっこりと微笑んだ。







なんとなく居候


2013.4.14 執筆