Dreaming

これが私の生きる道 #26

それはいつものように、不本意ではあるがサソリの使いっ走りをしていた時の事だ。
鬱蒼とした森のなか、確かに噂に聞いた事のある大蛇丸の研究所の近くを通った。目的地に向かうのに一番近いルートだったからその道を選んだわけだが、それが災いした。


「ナルトの次はサスケ・・?もう、何なの最近。」


目の前には懐かしい顔。久しぶりに見るその顔は少し大人びているように見える。


「久しぶりだな。」
「えぇ、まぁ、そうね。」


懐かしい再会ではあるが、別段嬉しくも、嫌でもない。いうなら古い知り合いに道端で偶然すれ違ったようなものだ。


「あの後すぐお前も里を抜けたと聞いて驚いた。しかも暁に下るとはな。」
「あら、意外?」
「イタチとはどういう関係だ。」


どうやらサソリの弟子で部下だということまでは知らないらしい。となると、イタチのところへ向かったと考えるのが普通だろう。


(だから頗る不機嫌なワケね。)


少し面倒になってきたは逃げてしまおうかと影をとんとんとつま先で叩く。するとぬるりと神威が姿を現した。


「どういう関係って、同僚、っていうのかしら。あぁ、でも行動は共にしていないわよ。たまーに会うくらい。」
「イタチは今どこにいる。」


さぁ、と肩を竦めてみせると、サスケは苛立ちに目を細めた。


「本当に知らないのよ。まぁ、知ってても言わないけど。」
「そうか。」


そう言いながらサスケは帯に差し込んである刀を鞘から抜いた。


「へぇ、私とやり合うつもり?」
「俺がどれくらい強くなったのか、試すには丁度良い。」
「そうねぇ・・・でも、それに付き合ってあげられる程、私暇じゃないのよね。」


神威に目配せすると、彼は目的地に向かって走り出した。その行動に、サスケは不可解そうに眉を寄せる。


「言っておくけど、貴方は私の能力の半分も知らないのよ。」
「それはお前も同じだ。俺は里を抜けて強くなった。前の俺と同じだと思うな。」
「そのセリフ、三流の悪役っぽいわよ。」


そう笑って言いながらは居合の構えを取った。
確かに彼女が居合をするところなど見たことは無い。が、それが何だと言うのだろうか。
サスケは構わずにぐ、と刀の柄を握りチャクラを流す。ばちばちと刀身が雷を帯びた。


「っ!」


飛びかかろうとした時、空気の揺れを感じて咄嗟に背後に飛び退くと、今まで立っていた場所がくれ抜かれたようにクレーター状になりバラバラと草と土が舞った。そして次々に飛び退いた空間が同様に切り裂かれていく。


(印を組む様子が無かっただけじゃない、全く動いていなかった・・・何だ、これは)


サスケが自然と距離を取ってくれている間には”円”をどんどん広げていく。その中に神威を補足すると、にこりとサスケに笑って見せた。


「じゃぁそろそろ行かせてもらうわ。」
「何を言って・・」


間合いを取られていることには気づいていた。接近戦が得意な自分を警戒してかと思ったがどうやら違うらしい、と警戒して距離を詰める前に、はそのまま瞬時に姿を消した。


「どういうことだ!?」


先ほどと同様に何のモーションもなく突然姿を消した彼女にサスケは周りの気配を探る。しかし、気配を消すのには定評がある以前に、は目視できる範囲にいなかった。


























神威は走りながら、傍に突然現れたに別段驚くこともなく走り続けた。
も何事もなかったかのように神威の背中に飛び乗る。


「うまくいったみてぇだな。」
「当たり前でしょ。」


神威の首にはの念が込められた赤い紐がついている。それを辿っての念で移動したのだ。
確かにサスケにはは何もしていなかったように見えただろう。彼にはが円を広げていたことなど気づくよしもないのだから。


「さて、早く行かないと。彼、時間に厳しいから。」


ちらりと時計を気にしながらはいうと、急かすようにゆるく神威の腹を蹴った。
サスケに足止めを食らった時間はそこまで長くないが、ルートを変更したため、当初のルートよりも少し時間がかかってしまうのだ。


「分かってらァ」


サソリとの付き合いは神威の方が長い。時間に遅れると面倒なことを知っている神威の努力の甲斐もあり、サソリの元へ到着したのは時間ぴったりだった。
土の国の一角にある隠れ屋は岩場の続く森の中にひっそりとあった。3部屋程の個室にリビングダイニング。各地にある程度の広さのある隠れ屋を持つのだから任務の際野宿することは少ない。それをは結構気に入っていた。


「明後日、砂に向かう。」
「ふぅん。」


リビングに入り、ヒルコから出てくつろいでいるサソリに巻物を渡すと礼も言わずに突然そう言い放つものだから、は眉を寄せながら適当に相槌を打った。


「デイダラとは砂で合流。一尾を狩るぞ。」
「そう・・・。私は二人のサポートをすれば良いの?」
「あぁ、追ってくる奴らがいるだろうからな。」


一尾ということは風影だ。風影本人も相当の強さであると噂で聞いている。さらに風影ともなると腕の立つ側近が必ずいるはずだ。


「できれば無駄な争いは避けたいところだけれど。」
「何ヌルいこと言ってんだ、てめぇ。」


呆れたように言われても、ここ最近サソリの使いっ走りで少々疲れている。がそうぼやいても仕方が無いだろう。


「まぁ良い。明日は久しぶりに修行をつけてやる。朝6時に俺の部屋に来い。」
「(年寄りの早起き・・・)・・・はいはい。」


考えていたことが分かったのかクナイが飛んできた。


























笠を被りなおして、焼け付くような日差しと乾燥した空気には苛立たしげに空を見上げた。風の国とは言え、アジトのある森の中は比較的涼しい。だが、今3人がいるのは砂漠の真っ只中だ。
日差しを遮るものは何も無い上に空気はカラカラ。


「しかもこの服の中サウナみたい。」


暑い、乾燥している、と文句を言った後に付け加えたセリフを隣で聞いていたサソリは煩いと一蹴した。


「人傀儡にしてやろうか?暑いのも何も感じねぇぞ。」
「また極端ね。遠慮しておくわ。」
「なら黙ってろ。」


ひどい、と口を尖らせると、デイダラが笑った。


「さっさと終わらせてやるよ、うん。」
「そうして頂戴。」


デイダラはうなづきながら粘土を左手で掴んだ。左手の口は大きく口を開けて粘土を咀嚼している。


「サソリの旦那とは見てればいい・・・うん。」


ぺっ、と左手の口が吐き出したのは小さな鳥だった。それを放り投げて印を組む。


「里へは上から攻める。」


ぼふんと煙があがって人が乗れるくらいの鳥になった粘土にデイダラは飛び乗った。そして彼は得意げにサソリとを振り返る。


「どうだい?この芸術的造形は・・・うん。」
「そのドヤ顔がむかつく。」
「あんまり待たせるなよ。」
「わかってらぁ!あと、あとで覚えとけよ、うん!」


そう言い捨てて飛び去るデイダラにひらひらと手を振ってはサソリを振り返った。今はヒルコに入っているため、視線がだいぶ低い。


「それで、私たちはここで待機?」
「あぁ。」


即答されては嫌そうに回りを見回した。周囲は先ほどサソリが殺した警備の忍が転がっている。人を待つには適さ無い場所だ。


「だから人傀儡になるか?臭いも遮断できるぜ。」


それを見て察したのかサソリがくつくつ笑いながらいうものだからは睨みつけて土壁の上へと駆け上がった。
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2016.07.08