Dreaming

紺地に白と水色の花が散っている着物という珍しい出で立ちのはサソリとデイダラと共に任務にあたっていた。とは言っても雷の国の大名が保持する数本の巻物の強奪とその護衛にあたっている忍を2人(ビンゴブックに載っている)合わせて殺すというものだった。
前者についてはすぐに終わったのだが、情報とは違い、護衛にあたっていた忍が問題だった。ビンゴブックに載っていた忍とは別の忍がついていたのだ。


「その忍はついででしょ?もう良いんじゃない?」


ビンゴブックのターゲットページを見ながら、巻物の中身を確認しているサソリに言葉を投げかけてみたものの、サソリは眉を寄せて舌打ちして返した。


「角都からのノルマだ。」
「・・・暁ってそんなお金無いの?」


微妙な表情で尋ねると「さぁな」と気の無い返事が返ってきて、はため息をついた。
サソリとデイダラは暴れる所については協力的だが、それにたどり着くまでの準備や下調べについては我関せず。今までどうやって任務をこなしてきたのかと呆れるほどだ。


「分かったわよ。調べてくるから大人しくしててね。特にデイダラ。」
「おう!・・・ってオイ、なんで俺名指しなんだよ!うん!!」
「サソリ、ちゃんと変なことしないように見といてよ。」


食ってかかるデイダラを無視してサソリに言うが、また気の無い返事だけ。
まぁ、騒ぎが起こった時はその時かとはため息をついて借りている宿の一室を後にした。


温泉に入ると騒ぐデイダラの意向のため、温泉街の一角の旅館に達は宿を取った。
硫黄の匂いが鼻につく中、温泉街を下りながらぱらぱらとビンゴブックをめくる。
別に指定された2名である必要はないのだから、とりあえずビンゴブックに載っている雷の国の忍びの名前と顔を頭に入れていく。


(とは言っても、ターゲットの私物があれば匂いで神威に辿らせれば良いけど、そんなもの無いし)

雷の国の内情に通じる駒も知り合いもいなければ、が自由に使える部下と呼べる人間もいない。いるのは非協力的な上司とお守りをしないと問題ばかり起こす爆弾魔だけだ。


(分身を使っても、白眼とか写輪眼みたいなの持ってるのと会っちゃったら怪しまれるし)


あぁもう、面倒臭い。口の中でつぶやいてビンゴブックを懐にしまって顔を上げた所で、は目を見開いた。
具合が悪いことに、が目を留めた相手もを認め、口と目をぱかんと開けている。


!?」


大した知り合いじゃなければしらばっくれるのも可能だが、相手は短期間とはいえ同じ班にいた相手だ。しっかり名前も呼ばれてしまっている。


「お、お前、生きてたのかよ!今まで何してたんだってばよ!!」


そう言いながら小走りにこちらへかけてくるナルト。


(隣にいるのは自来也・・・ナルトだけならまだしも、ちょっとまずいわね)


はにこりと笑うとその場から姿を消してすぐさま絶をした。
木の葉の上の人物はの屍体が偽物であることを知っている可能性は高い。それをナルト達には伝えていないという事は、それどころじゃないから、の事は捨て置くことにしたという事だ。


(ナルトに会わなければ、無罪放免だったのかも)


遠くで「どこに行っちまったんだってばよー!!!」と叫ぶ声がする。
とりあえず宿に戻って、サソリに九尾と自来也がいるから別の国で狩るように言おう。そうしよう。































ナルトの背後で一連の出来事を見ていた自来也は顎に手をやってナルトに声をかけた。


「何じゃ、今の別嬪さんは。」
っていって、一緒の班にいたんだってばよ。木の葉崩しの後、サスケが里抜けする時に死んだって聞いてて・・・」


そこまで聞いて、自来也はちらりと綱手から聞いた一人の人物を思い出した。
火影に就任し、息抜きに酒を彼女の執務室に持ち込んで飲んだ時、言うなよと釘をさされつつも話にあがったのは精巧な偽物の屍体を置いて里を去った一人の少女。
実際に会った事は無かったが、資料上の経歴(医療忍術や傀儡)に舌を巻きつつも火影就任後・木の葉崩し後の立て直し、サスケの出奔でそれどころではなかった。其の為担当上忍に持ち出した機密情報の有無を洗わせ、なにも無ければ捨て置くように助言したのだ。


(さて、何の為に里を抜けて、今なにをしておるかじゃが・・・)


先ほど本の数秒見た限りではどこの組織に属しているか、なにをしているか等さっぱりわからない。

(一応報告だけしとくかのォ)


追っても良いが、そこから鬼が出てくるとも限らないし、気配の消し方が異常に上手い。
人混みの中、油断していたとはいえ、一瞬で姿を消し、気配を消す術は一級品だ。


「ほれ、もう行くぞ。どうせもうここら辺にはおらん。」


じっと、がいなくなった場所を見つめるナルトの頭を小突いて声をかけると気落ちしたような、それでいて嬉しそうな複雑な表情をしたナルトがいた。


「・・・・」
「生きてるのは分かったんじゃ。今はそれで良いじゃろ。」


こいつ、こんな複雑な表情もするのかと感心しながら慰めるように言うと、ナルトはふと息をついてうなづいた。


「そうだな!生きてるのが分かっただけ、よかったってばよ!」


そう返して促されるまま次の街に移動する為放っておいた荷物を拾い上げた。


「俺らの班の中で、は特別やる気も無い奴だったけど、なんでも出来て、頼りになる、いい奴だったんだってばよ。」
「まァ、お前バカだからのォ・・・」


直情型のナルトから見て、報告書上で見た彼女はさぞ冷静で的確に分析をする優秀な忍に見えた事だろう。


「本当は、あいつが中忍試験受けないっつった時、変だと思ったんだってばよ。俺ら同期の中で上に一番近いのあいつだと思ってたし、もつまんない任務はごめんだって言ってたし。」


周囲がサスケに目を取られる事を見越して、中忍試験を蹴って里を抜ける準備を虎視眈々と進めていたのだとしたら・・・いや、残された精巧な遺体からそれは確実だ。となると相当な切れ者という事になる。


「あいつ、本当になんで里抜けたんだろ・・・」


自来也は悩むナルトの黄色い頭を見ながら顎に手をやった。

































宿に戻るなり、はサソリに事情を話しててきぱきと荷物をまとめ始めた。
最終的に尾獣を集めるつもりであるのは知っているが、今はその時ではないし、一緒に伝説の三忍がいるのなら突発的に捕獲に向かうのは得策ではない。
即座にそう判断をしたサソリは別の国に向かうことに特段反対もせず頷いた。


「まだ温泉満喫してねぇ!」


ごねたのは矢張りデイダラだ。
温泉に行くと言い始めたデイダラはのんびりと部屋で彼曰く芸術活動に忙しかったようで、まだ温泉を楽しんでいないのだと主張する。


「貴方、犯罪者なんだからそもそも温泉をゆっくり満喫するの諦めたら?」
「それくらいの人権俺にもある!うん!」


面倒臭い。としっかり顔に書いたはため息をついてサソリを見た。


「サソリの相方なんだし、サソリがどうにかしてよ。」
「お前は俺の部下なんだから、駄々こねてるそいつをちゃんと説得して連れてけよ。」


の話を聞いて荷造りを始めたサソリはすっかり荷物をまとめ終わっている。
対しては動く気配のないデイダラの荷物をまとめている最中だ。


「・・・おとなしくイタチの部下になっとけば良かったのかしら。」


ぼそりと呟いたらサソリからクナイが飛んできた。
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2016.03.14