指定の時間から少し遅れて行くと、丁度担当であるカカシが来たところだった。
ぎゃーぎゃーと騒ぐ金髪の少年に耳を塞ぎ、アツい視線を送ってくるサスケからは目をそらすと、面白そうに自分を眺めているカカシと目が合った。


「私は、。他に話すことは無いわ。」


自己紹介もそっけないものになる。
やはり金髪の少年、ナルトがぎゃーぎゃーと文句を言ってくるが、それを完璧無視し、空を仰ぐ。


(こんな煩いのと、これからやっていけるかしら・・・)


切れない自信が無い。


(・・・さっさと里を抜けるべきかしら)


ちゃんとアカデミーは卒業したのだし、最早ここに留まる理由は余り無いのだ。
それでも残ったのは、あの自分そっくりの死体がまだ出来ていないこともあるし、通常どのように里の忍者が任務をこなすのかを知っておきたかったからだ。

それなのに、このままでは、通常任務をやらせて貰える気がしない。
まさか、中忍に上がるまでお預けなのだろうか、と考えて顔を曇らせた。










これが私の生きる道 #14














言い与えられた演習内容に、は眉を寄せた。
言っては何だが、彼から鈴を取るのはだいぶ骨が折れそうだ。
自分で骨が折れるということは、他の3人はどう考えても無理だろう。


「・・・何を考えてるのかしら、彼。」


果敢にカカシに挑む3人を眺めながら首を傾げる。


「・・・彼は、鈴を取れるとは思っていない。他の目的があるはずだけど・・・。」


ま、いっか。とは呟いて、刀を手にした。
勿論気配は消している。

丁度、サスケが吹っ飛ばされた直後、はカカシの背後に回った。


「おっと。」


繰り出された一打をクナイで受け止める。


「君があの問題児ね。」
「あら、問題児だなんて、心外だわ。天才児と呼んで頂戴。」


手にチャクラを集中させると、刀に雷がまとわり付く。


「!」


それにカカシは目を見開く。
まさか、この年でその術までマスターしているとは。


「この茶番の真意だなんて、どうでも良いけど、私、負けるのは嫌いなのよね。悪いけど、本気でいくわよ。」


ぎりぎりとの刀を受けていると、横から足蹴りが来る。
それを刀を受け止めている手とは逆の手で受け止めるが、予想以上の破壊力に、カカシは横に吹っ飛んだ。


「あら、私、力が強いって聞いてなかったの?」


凝をすると、カカシがいつの間にか分身に変わっていることに気づく。
分身に用は無いとばかりに、木にぶつかったカカシを切り捨てると周りを見回した。


「・・・そこ、ね。」


土の中。
は少し考えて、右手にオーラを溜めると、カカシが潜っている場所に向かって打ち込んだ。
轟音が響き、地面が割れて、土と石が舞う。


「・・・まさか、こんな手を仕掛けてくるとはね。」


カカシは驚きながらも冷静に印を組むと分身が2人現れる。
は2人を相手に、もう片方の手にクナイを握り応戦するが、流石にキツい。
自分も分身を出そうと跳躍して印を組んだとき、本体のカカシが肉薄し、その腹に蹴りを入れた。


「っ!!」


オーラを纏わせていなかった腹は無防備で、は息を詰まらせて地に叩き落された。
けほ、と咳き込むと目を細める。
彼は、が印を組むことを予想していたのだろう。


「あれ、もう終わり?」


からかうように上から降ってくる声に、はにっこりと笑いながら立ち上がった。


「まさか、貴方から一撃貰うなんて、思わなかったわ。」


立ち上がったの目は冷たく光っていた。


「・・・本当に、強いのね、貴方。」


そう賞賛しながら印を組むと、地面から水が溢れ出した。
そしてそれは人の形をかたどる。すぐにの姿になったソレが巻物を取り出すと、傀儡が2体飛び出した。


「でも・・・流石にこれはキツイでしょ。」


笑いながらは刀を握りなおす。
しかも、もう一人のは2体の傀儡を操っているものだから、そちらにも気を配らなければならない。


「流石に、死に至る毒は仕込んで無いけど、痺れ薬は仕込んでるから気をつけてね。」


面白そうに笑うは、容赦が無い。
カカシはまさかの事態に、顔を引き締めた。



















その様子を観戦していたサスケは、ぎり、と歯をかみ締めた。
彼女が異常な力を身につけているのは知っていた。

しかし、これ程とは思わなかったのだ。


「・・・クソっ」


ちりん、と鈴が鳴って、が鈴を手の中で揺らしている。
迂闊にも、痺れ薬を盛られた傀儡の一撃を受けたカカシは動きにくい身体に舌打ちした。


「へぇ・・・それを受けてまだ動けるだなんて、凄いわね。」


関心しながら、鈴を揺らすは満面の笑顔をカカシに向けた。


「でも、不便でしょ?これ、解毒薬。」


カカシは、情けない、とため息をつきながら、礼を言ってそれを受け取った。


「でも、あそこで、そのかすり傷で済むだなんて、流石ね。びっくりしちゃった。」


くすくすと上機嫌で笑うは、先ほどまで自分を追い詰めていた少女と同一人物とは思えない。


「あー、なんか悲しくなってきた・・・。」


油断は、確かにしていた。
アカデミーを卒業したてで、しかも血継限界も持っていない少女など、高が知れていると思ったのだ。

それでも、鈴を取られるなどということは予想していなかった。


「ほんと、何者?傀儡なんて、火の国じゃ使える奴いないでショ。」
「知り合いに傀儡使いの人がいて、小さい頃から教えて貰ってたのよ。」


それにしても、あそこまで実践レベルに持っていかれると、これからが恐ろしいというものだ。


「鈴は取れたけど、失格なんでしょ?この私がここまで梃子摺るのに、他の3人が貴方から鈴を取れるだなんて思ってないわ。他の試験をしていると思ったんだけど・・・」


気づいていながら、実力行使で来たのか、この少女は。


「よく分からないから、とりあえず鈴を取っちゃおうと思ったのよね。」


カカシは何と言って良いか分からず、頭を掻いた。




















結局以外は鈴を取る事が出来ず、含め、全員失格を言い渡された。
それに、別段は不満は無かったが、未だに真に何を測りたかったのかが分からない。

しかし、アカデミーに戻るのは了承しかねる。


(・・・・アカデミーに戻るということは、下忍でもなくなる。里を抜けたとしても抜け忍にはならない筈よね。)


これは良い案かもしれない。
はカカシから渡された弁当をナルトに渡した。
弁当抜きのナルトに分け与えたら、この演習は失格。これで晴れて失格ということだ。


「これ、食べると良いわ。私、お腹すいて無いのよね。」


これで自分は下忍でもなくなるだろう。


「お前・・・悪い奴だって思ってたけど、いい奴だってばよ!」
「・・・・それはどうも。」


そうして、此処を離れてしまおうと思うものの、同じ班の女の子に止められる。


「待って!流石にお昼抜きじゃ辛いでしょ?私の、半分食べない?」
「うーん、折角だけど・・・」


断ろうと思うのに、彼女は引き下がらない。
それだけではなく、サスケも、なぜかが弁当を渡したナルトまでも少しずつ弁当を寄越そうとするものだから、辟易しているところに、現れたのはカカシで、彼は、今回の真の目的を話してくれた。

言っては何だが、呆れてしまう。
チームワーク等、それから程遠いところに自分はいるのだから。


(・・・ってことは私も晴れて下忍ってこと、よね)


弁当なんて渡すんじゃなかった。そう後悔するも、もう遅い。


(まぁ、当初の予定通り、死体が完成するまではこの子達のお守をするってことね)


さっさと死体を完成させなければ。
そのためにも、一度サソリに会いたいが、下忍になった今、自由に動き回るのは厳しい。

今までは余りサソリが犯罪者であることに不便を感じたことが無かったが、今日初めて、全うな道を歩んでくれれば良かったのに、と悪態をついた。







演習



2013.4.3 執筆