目の前で吹き飛ぶ傀儡。
は悔しさに眉を寄せた。


「・・・まぁまぁ、ってとこだな。」
「どこがよ。」


吐き捨てるように言って、は地面に腰を下ろした。
流石に、3時間戦った後に、傀儡を使って稽古するのはきつい。


「文字通り、手も足も出ない。だなんて、納得行かないわ。」


恨めしそうにサソリを見上げる。


「ったく、とんだ完璧主義者だな。お前は。こんだけ出来りゃ上等だろーが。」


ごすん、と頭を叩くと、その手を乱雑に払う。


「やるからには貴方とそれなりに遣り合えなきゃ意味が無い。」
「それが理想が高ぇっつってんだよ。俺を誰だと思ってんだ。あぁ?」


確かに、彼は高名な傀儡使いだ。
それは分かっている。


「お前の完璧主義は嫌いじゃねぇが、限度ってもんがある。ほどほどにしとかねェと命を落とすぞ。」
「サソリの馬鹿」


あぁ、なんて情けない。こんな捨て台詞しか吐けないだなんて。
は苦い顔をしながら走り去った。











これが私の生きる道 #13













デイダラは、また一つ響く轟音に、暢気に「あーあ、またやってるよ」と呟いた。
最初はサソリが弟子の面倒を見るだなんて、そう続かないだろうと思っていたものの、サソリは火の国での任務を積極的に取り、は一ヶ月に1回くらいのペースでサソリに修行を見てもらっている。


ぐぅ、と腹の虫が鳴って、デイダラは外へ出た。
すぐ近くで修行を行っているは相変わらず傀儡に囲まれて容赦ない攻撃を受けている。


「おい・・・って、こら!」


声を掛けようとした時、のクナイが確実にデイダラの額を狙って飛んでくるものだから、デイダラは慌てて避けた。


「危ねーだろ!うん!」


はちらりとデイダラを見ただけで、返事も無い。
要するに、邪魔するな、ということらしい。

かちん、と来たデイダラは爆弾を作ると、達の元へと放り込む。


「!」


はその場から飛びのき、サソリも操っていた傀儡を非難させた。


「・・・・オイ、クソダラ・・・・」


よりも早く文句に口を開いたのはサソリで、は自分がいってやりたかったのに、と口を尖らせる。


「修行の邪魔はすんなっつだだろーが!えぇ!?」
「な、なんだよ・・・オイラ、だって・・・腹減ったんだよー!!!!!!」


そんなことで邪魔したのかと2人は呆れた顔をする。


「ってことで、、今すぐ飯を作れ、うん!」


は頭が痛いとでも言うように頭を押さえた。


「・・・・私が、いつ、アンタの家政婦になったのよ。自分で作りなさい。馬鹿。」
「オイラ自慢じゃねぇが飯作るの下手なんだよ、知ってるだろ?うん!」
「自分の世話くらい自分でしろ、糞餓鬼。」


鼻で笑いながらサソリが言うと、デイダラが切れた。


「餓鬼じゃねぇー!!うん!!」


そうして殴りかかっていくものだから、はため息を付いて、2人に背を向けた。
確かに空腹は感じる。さっさと作って食べて、次の修行をこなしたい。



一時間後、戻ってきたはまだ争っている二人を見て、顔をゆがめた。


「ポチ、ハウス。」


そう言うと、二人がぴたりと争うのをやめてを見た。


「ポチ・・・?って、俺のことか!?うん!」
「そうよ。餌を用意してあげたんだから、ほら、ハウス。」
「ってことは、昼飯か!うん!!」


デイダラは悔しそうに眉を寄せてとサソリを睨み付けた後、アジトへと走り出した。
その後姿をは不憫そうに見た後、サソリをまた、不憫そうに見た。


「・・・相方、アレで良いの?」
「・・・木の葉を抜けた後は、俺の相方になるか?」


は肩を竦めた。


「考えておくわ。」























最早、が3日間修行と称して里から姿を消しても、誰も何も言わなくなった。
アカデミーでの成績は文句なしに良く、素行も、良くはないが、悪くも無い。
そして、早々に味方に引き込んだイルカの存在。


未だに、サスケは事ある毎に突っかかって来るものの、にとっては大したことではないのか、軽くあしらって終わり。

それが続き、アカデミーを卒業する頃には、は普通では在り得ないであろう、力と知識を身につけていた。
勿論、それには教師も気づいている。

だからこそ、彼女の班割り当てには、梃子摺った。
3マンセルで組むには、1人あぶれる、というのも原因の一つだったかもしれない。


「1人で任務をやらせるでも問題は無いと思うが・・・・」
「最初からチームワークを学ぶ場を与えないのはどうかと。」


そこに、火影が通りかかったのは全くの偶然だった。
ナルトについて話をしよう、とイルカを尋ねてきたのだ。


「ほぅ・・・珍しいな。班宛てでここまで悩んでおるとは。」


部屋にいた教師は驚いて一様に立ち上がる。


「良い、良い。ワシも少し話に加えて貰えんかの。」


一重に好奇心。
火影は適当な椅子を引っ張って輪に加わった。
彼女に関する資料を受け取り、眺めると分かる。彼女が異質である、ということに。


「ほぉ・・この年で雷遁と水遁をマスターしておるとは・・・しかも、授業の際に怪我した生徒を治療、ということは医療忍術も使えるということかの?」
「はい。後はチャクラのコントロールが優れていて、とてつもない怪力です。」


それを聞いて、火影は面白そうに笑った。


「単独任務は、下忍では認められておらん。となると、一つだけ4人の班が出来ることになるだろうが・・・どうじゃろう、ナルトのおる班に割り当ててみては。あの班は少し血の気が多いようだからの。医療忍術が使えるものがおった方が良かろうて。」


火影の言葉に反論する者は居ない。
火影は立ち上がると、イルカに声を掛けた。


「さて、これで決まりじゃな。イルカ、少し顔を貸せ。」
「あ、はい。」


イルカも立ち上がり火影とともに部屋を出て、他の空き部屋に移動した。


「随分と今年は面白い生徒が多かったようじゃの。」
「それはもう・・・手を焼きましたよ。」


はは、とどちらかと言うと苦笑するように笑うイルカは火影を見た。


「今回の主席と次席それにナルトが加わるとすると、相当騒がしい班になりそうですね。」
「なぁに、何とかなるじゃろう。」


それでも、特に彼女は一筋縄ではいかないんですよ、とイルカは力なく呟いた。




















は班分けに、それはもう嫌そうに眉を寄せた。
あの煩い少年に加えて、イタチの弟までいるのだから、困ったものだ。


「明日、10時集合か・・・。」


集まって何をするのだろう。
まさか、最初から任務ということは無いだろう。


「自己紹介とかかしら。」


どちらにせよ、面倒なことに変わりは無い。
は大きくため息を付いて、ごろりと横になった。


言っては何だが、自分に協調性というものは皆無だ。
まだ、相手が分別のある大人であれば別だが。


「しかも、私の班だけ4人だなんて、全く面倒臭い。1人の方がまだ上手くいくと思うけれど。」


苛々としていると、地面が波打って、白い虎が姿を現した。


「あら、白(しろ)。どうかした?」


白と呼ばれた虎は、口に銜えていた巻物をの前に転がした。
見覚えのある巻物だ。


「また新しい宿題?」
『あぁ。サボるな、と言っていたぞ。』


白はの口寄せ。
下したのは自身だが、元々はサソリの口寄せでもある。

故に、主人はになるものの、サソリも呼び出すことが出来る。


「あぁ、本当に弟子思いの師匠を持って、私は幸せだわ。」


心にも無いことを言って巻物を開くに、白は笑うと、姿を消した。




班分け



2013.5.1 執筆