の予想通り、次の日からサスケに付きまとわれる日々が始まった。
しかし、そう簡単に捕まるではない。


「・・・・はぁ。」


教室の窓の外。
チャクラを足に集中させて、壁に"立った"状態ではため息をついた。


「・・・は?」


クラスメートに尋ねるサスケの声。
全く、飽きもせずによく押しかけてくるものだ。
サスケが近づく度に、は気配を消してこうして外で彼が去るのを待つ。


「さっきまで居たんだけどなぁ・・・。」


答えるクラスメートの言葉に、サスケは舌打ちした後、教室から出て行った。
それを察して、窓から教室に入る。


「・・・・さんって、サスケ君のこと嫌いなんだ?」


毎度毎度こうやってやり過ごしている事をクラスメートは黙認してくれている。
どうやら、最初の、黒板に机を陥没させた事件が尾を引いているらしい。


「嫌いか好きかで聞かれると、どちらでもない、になるのかしら。唯、面倒だから逃げてるだけよ。」


あぁ、面倒なことになった。と呟きながら席に着く。
なんていうか、逃げ回るなんて彼女の性分ではない。
しかし、だからと言って、彼に今更何を話すというのだ。

答えは出ない。










これが私の生きる道 #12













今日も退屈そうに授業をこなす。
教師ももはや諦めていて、全く関係の無い本を読んでいてもスルーしている。

彼女はたちが悪いのだ。何せ、本を読んでいるところに授業に関する質問をしても悉く正解を返してくるものだから。
終業の鐘が鳴ると、彼女はそれと同時に立ち上がる。
そして誰よりも早く教室から出る。それも窓から。

当初はクラスの何名かが真似しようとしたが、危うく骨折しかけて以来、誰も真似するものは居ない。
彼女に向けられる視線は一種の畏怖・畏敬の念が篭められているものに、いつしか変わっていた。


しかし、今日は違った。
鐘が鳴ると同時に、いのが教室に飛び込んできたのだ。


!」


足早にに駆け寄るいのは、がしりと彼女の肩を掴む。


「珍しいわね。どうしたの?」


はサスケがこちらへ向かってくる気配に、ちらちらとドアを気にしながら尋ねる。


「・・・・私の恋の為よ。我慢して。」


瞬時に、彼女は悟った。
これは、サスケの差し金だと。

教室に飛び込んできたサスケが目にしたのは、いのが投げ飛ばされる所だった。
手加減はしているのか、壁にぶつかるものの、壁にヒビは入らない。


「待て!」


は、内心、誰が待つか、と返しながら窓から飛び出す。
それを追ってサスケも窓から出て行くものだから、担当教員は、またか、と呟く。


諦めずに追ってくるサスケには嘆息した。
こうも毎回休み時間を邪魔されたり、放課後突撃されて、辟易していたところだった。


(仕方ないわね・・・)


はサスケが追ってこれる速度を保ち、うちはの森へと入っていった。
そして、よくイタチと修行していた当たりでようやく足を止める。
サスケは息を乱しながら、涼しい顔で立っているをにらみつけた。


「・・・・で、何が聞きたいのかしら。」
「イタチとどういう関係だ。」


何が聞きたいのかと思えばそんなことか、とは視線をサスケに向けた。


「・・・・友人よ。」
「あの男がうちはを壊滅させたことは知っているのか。」
「えぇ。」


サスケの目が鋭いものに変わる。


「・・・・・あいつは何処にいる。」


はその質問に肩を竦めて見せた。


「私が知る訳ないでしょ?」


サスケは疑わしげにを見るが、彼女は表情を崩さない。


「・・・・・イタチにずいぶんと拘っているのね。ブラコン?」


くすくす笑いながら言うと、サスケはクナイに手をかけた。
目にも留まらぬ速さで投げるものの、それはの手が受け止める。
勿論、刺さってはいない。


「!」


尚も笑顔のままで自分を見る彼女に益々警戒を強めた。


「残念だけれど、貴方に教えられる事は何一つ無いわよ。」
「・・・・俺は必ずあいつを見つけ出して、殺す。」


立派な殺人宣言に、は受け止めたクナイをくるくると回した。


「・・・・・一つだけ忠告するとすれば・・・・・」


その言葉にサスケは動きを止める。


「物事を額面どおりに受け取っていては、真実に近づけないわよ。もうちょっと貴方は多方面から分析する、ということを覚えた方が良い。」


何を言うかと思えば、そんな忠告に、サスケは怒りに手を振るわせた。


「お前に何が分かる!」


怒鳴るサスケには笑顔から一変、不快そうに眉を寄せる。


「あぁ、あぁ、だから子どもは嫌いなのよ。すぐに喚く。煩いったら無いわ。」


がクナイを投げると、サスケの頬の横を通り過ぎて、後ろの木に刺さった。
それに気を取られているうちに跳躍する。


「待て!」


サスケの声を背に受けつつ、はさっさと姿を消した。





















サソリが作ったであろう、折り紙で作られた鳥がの元に飛んできたのは、木の葉に戻ってきてから3週間後のことだった。
どうやら火の国に1週間滞在するらしい。


(明日は休んで、土日入れれば3連休。問題は言い訳よね。)


とは言っても、もっともらしい墓参りは既に使ってしまった。
は少し考えた後、置手紙を2枚作ると、テーブルの上に置いた。

素直に、3日間修行の旅に行って来るとだけ書いて、一枚はいのの両親に宛てて、もう一枚は担当教員宛てだ。
きっと、いのが渡してくれるだろう。

傀儡の入った巻物と読み終わった本、そして刀を手にしては家を出た。
一応慎重に里の外れまで向かう。

立派な犯罪者であるサソリのところへ向かうところを見られると、相当不味い。
腕には多少の自信があるが、この里の追い忍を相手に出来るかと問われると怪しい。


(ここら辺で大丈夫かしら)


ぐんぐんと円を広げていくと、サソリが引っかかる。
彼はピアスを身に着けてくれているようだ。

はその場から消えた。


「よォ。」


そうサソリの声がしたかと思うと、傀儡が2体向かってくる。
どうやら修行はもう始まっているらしい。

刀を抜いて、傀儡の刃を受けながら、周囲を確認する。
凝をすると、どうやら地面の下に2体傀儡がまだいるらしい。


「・・・容赦無いわね。相変わらず。」


当然毒の塗られているであろう傀儡達に警戒しながら、先ずは左手の一体を再起不能にしようと印を組む。


「雷遁・雷網」


の周囲にちかちかと雷が走る。
足止め様の術だが、それでも一瞬傀儡の動きを止めてくれる。
その隙に、一体、刀で足と手を切り落とす。

すぐにもう一体は動き出すので、は思ったよりも早い戻りに舌打ちする。
あわよくばもう一体も切り捨てようとしていたのに、迫り来る鋸のような刃に避けるしかない。


「中々やるようになったじゃねぇの。」


土ぼこりが舞い、もう2体の傀儡が飛び込んでくるが、既に存在を感知し、警戒していたは慌てる事無く対処する。


(冷静だな。悪くねェ。)


所詮使い捨て様の傀儡に過ぎないが、それでも並大抵の忍に負けるような代物ではない。
驚くべき速さで、傀儡相手の戦い方を身につけていくに知らず知らずのうちに笑みを浮かべた。


「が、少し甘いな。」


もう2体の傀儡も潰し、さぁ残り一体だと、が向き直った時、完全にサソリは背後に回っている。
クナイを手にの肩めがけて投げると、それは深々との左腕に突き刺さった。
一応、寸でで反応はしたが、避け切れなかったようだ。


「ったく、傀儡を操作している奴に背を向ける奴があるか。」
「・・・・・痛い。」


は顔を歪めてクナイを抜き取ると、サソリに向かって投げ返した。


「でも、まァ、及第点はやろう。」
「え、本当、に・・・・?」


やった!と喜ぼうとしたのも束の間、ぴりぴりと痺れる身体に、しまったと眉を寄せる。
あのサソリがただのクナイを投げてくる筈が無いのだ。


「お、おに・・・・」
「クク、そりゃどーも。」


笑いながらもサソリは解毒剤を取り出した。







追求



2013.4.26 執筆