「あら、此処は?」


数メートル歩いては此処は何だと尋ねて来るに山本は全く嫌な顔一つせずに説明を続けていた。


「あぁ・・そこは医療室だな。」
「まぁ、四番隊がこんなところにも。」


うふふ、うふふ、と彼女はふたつ笑いを落として再び歩き始めた。
山本は笑顔でその後を追いかける。


「それで、こちらは?」
「此処は訓練室だな。」


その言葉を言った瞬間、の瞳がこの日一番輝いた。


「まぁ!憂さ晴らしをするところがこんな所にもあるなんて!!」


楽しそうじゃないですか!とは喜々として中に入って行ってしまった。


「あ、ちょっと、待てって」


追って入った山本は気づかなかった。
今、誰がその訓練室を使っているのかということに。
訓練室に、誰がいるかを示すプレートの部分には
「雲雀」の文字。
そこはかとなく嵐の予感である。














がらくた ワルツ














二人が入った先にいたのはやはりというか、彼、雲雀恭弥だった。
雲雀はすっと入って来た二人に鋭い目を向けると不快そうにその眉を寄せた。


「ねぇ、山本武。何、それ。」
「あ、こいつは。ちょっとした手違いでこっちに来ちまって今ボンゴレで面倒見てんだ。」
「其の前に貴方の方こそ名前を名乗って下さらない?どうも、私ったら、人に見下されるのが大っきらいみたいで、何だか貴方のその高圧的な雰囲気が不快で不快で・・・。」



と、不快な空気を追い払うようにひらひらと手で仰いでみる彼女にぴくりと雲雀の頬が動いた。


「君、」


そう言うと同時に雲雀はトンファーを手に取って振りかぶった。


「何かムカつくから此処で死ねば。」
「まぁ!」


当のはと言うと、丸腰。
其処で瞬歩で山本の隣に移動すると、彼の刀を「ちょっと借りますよ」と断って強引に奪い取った。


勿論、雲雀のトンファーは空を切り、前につんのめる。それに雲雀は目を見開いた。


「全く、口の悪いお子さんですこと。ちょぉっと躾がなってないんじゃないんですか?ねぇ?山本くん。」
「あー、まぁ、そうかもな。ははっ」


体勢を立て直した雲雀はぎろりとを睨みつけながらも口を面白そうに歪めた。


「君、面白いね。ちょっと僕が相手してあげるよ。」
「あらら、それは光栄ですね。」


はそう言いながら鞘を抜いた。


「人間の刀とやらを使うのは初めてですが・・まぁ、お遊びには付き合えるでしょう。ほら、いらしてください。いらっしゃらないなら・・・」


そう、にやりと笑いながらが言った瞬間、の姿がぶれて見えて、雲雀ははっとトンファーを背後に構えた。


「あら、」


其処には刀を構えたが居て、彼女が瞬歩で移動したことが分かる。


ガキィン

と音が響き、の刀の一撃はトンファーで弾かれたが、そのまま切り合いが始まる。


「まさか、今のが防がれるなんて、びっくり。貴方、良い腕してますね。」
「何なの、君。」
「さぁ、何でしょうか。」


うふふ、と笑っては打ち合っていた刀に両手を添えるとトンファーを弾き返し、雲雀は身体ごと吹っ飛んだ。


「ホームランって言うんでしたっけ。こういうの。」
「いや、内野ゴロなんじゃねーの?」


そこにはすかさず山本が(ちょっと間違った)突っ込みを入れるが彼女は気にしない。


「さぁて、そろそろ飽きてきましたし、締めにしましょう。」


そういって、はにっこりと笑うと「破道の七十三『双蓮蒼火墜(そうれんそうかつい)』」と唱えた。
けほっと、息を吐き出しながら叩き付けられた壁から起き上がった雲雀はその瞬間、己を包み込もうとする爆炎に目を見開いた。


「・・・っ!」


奔る振動と、爆音。
電気がじじ、と音をたてて切れたり着いたりを暫く繰り返す。


「おー、揺れたなー。ってかすげぇ!」


山本ははしゃいで、すげぇすげぇと連発。
はそれを尻目に鞘を拾い上げてそれに刀を収めると山本に返した。


「どうもありがとうございました。お陰さまで何とか死ぬことは無く・・・」


という彼女の言葉を遮って大きく扉の開く音がした。
もう、本当にありがとうございました。いえいえ、良いんですよ、奥さん。という感じで話を進めようとしていた二人の所に、ドアを突き破る勢いでやって来たのはベルとリボーンとツナ。


「あら、どうかしたんですか?」
「随分慌ててるみてーだけど、何かあったのか?」


山本も何だ何だと尋ねると、ツナは訓練所の一角を見てひぃっと小さく悲鳴をあげた。
そこには無傷・・・という訳にはもちろんいかなかった雲雀の姿。
例のボックスで致命傷は避けたのか、ちょっと服が焦げちゃったり、斬り合いの時にちょっとやっちゃった傷があったりで、何気にぼろぼろの雲雀はぎんぎんに目を光らせてを睨みつけながらよろりと立ち上がった。


「咬み殺す・・・」


そしてこちらへ向かって来るのを認めてはベルが持って居た刀、つまり己の斬魂刀を奪い取って抜いた。


「久しぶりに楽しめそうじゃないですか。ほら、ベル、行きますよ。」
「えぇっ!駄目ですって人間とそんな」


主が引き戻す力には反抗出来ないのか、ベルは吸い込まれるように姿を消して刀へと戻った。
突然消えたベルにツナは「うわぁ、やっぱり刀だったんだなぁ・・」と暢気に言いかけたが、いやいやと首を横に振った。


「じゃなくて、二人とも・・」
「ま、良いんじゃねーか。雲雀も最近は退屈してたみてーだし。良い運動になるだろ。」
「実は俺もちょっとと戦ってみてーんだよな。な、良いだろ?ツナ。」
「山本まで?もう駄目だよ。あんな戦いしてちゃ訓練所がいくらあっても足りないって。」


溜め息を吐きながらツナが指差す先には、ぼろぼろに壊れた壁に、無遠慮にボックスを使う雲雀と、無遠慮に鬼道に卍解を使いまくる


「あらぁ、逃げ場が無いんじゃないですか?」


うふふ、と笑う彼女の手には燃え盛る刀。
雲雀の周りはいつの間にか炎が取り囲んでいて、雲雀は苛立たしげに舌打ちした。


「あらあら。悔しそうな顔がとってもお似合いですね。あ、綱吉くん、写真写真。シャッターチャンスですよ!!」


と、アピールしてみるが、ツナは「そんなことしたら後がたいへんですって!」と猛抗議。
代わりに山本がぱしゃりと激写した。


「・・・山本武・・・君も一緒に殺す・・・」
「きゃー、こわーい。って今時の子は言うんでしたっけ?」
『分かってて煽ってるんですよね。知ってます。』
さん、雲雀さんぶち切れ寸前ですから!!」


ツナの声も空しくはつまらない、とばかりに欠伸を一つした。


「久しぶりに楽しめるかと思いきや・・期待はずれでしたね。」


そう言って刀を鞘に戻そうとした時、雲雀の額に青筋が浮かび、彼は炎を飛び越えた(潮騒みたいだな、オイ)。


「!」


そして飛び上がって落下する力を利用して振り下ろされたトンファーをは鞘に入った刀で受け止めた。
ぴきりと鞘に亀裂が走り、それにはまさかと目を見張る。


「ねぇ、もう終わりな訳、無いよね。抜きなよ、刀。」
「えぇ、えぇ、勿論です。面白そうじゃないですか。」


の目がゆっくりと弧を掻いて、片手で雲雀を弾き飛ばすと、は鞘から刀を抜いた。


「うっわー、雲雀さんを片手で弾き飛ばしたよ。凄いなぁ・・。」
「お前も見習え。」
「いやー、すっげぇな!」


外野ががやがや何やら言っている間には鞘を眺めてからぽいっとそれをツナたちのところに放り投げた。


「まさか、鞘に傷を入れられるとは思いませんでした。」


うふふ、と楽しそうに笑っては刀身に指を奔らせる。


「壱の式」


そう呟くと、空気がひんやりとして、刀身が青くひかった。


「・・・・さぁ、ベル。頑張って下さいよ。」


もう、ベルの声はに響かない。
びきびきと音を立てて床が凍り付き始めた。


「さむっ!」
「コレ、幻覚じゃ無いんだよね・・?」
「みてーだな。」


寒い寒いと山本とツナは呟く。


「ワォ。面白いね。まるでどっかの南国果実を思い出すよ。」
「あぁ、あのパイナップルですね。嫌ですよ、あんなのと一緒にされるのなんて。」
「あれ、君あの変態と面識あったんだ。」
「こちらの世界に呼び出された時、真っ先に会ったのがあのいけ好かない感じの変態パイナポーでしたから。」
「・・・君とはうまくやっていけそうな気がするよ。」


そんな暢気な会話をしているが、二人は音速でトンファーと刀をぶつけ合わせている。


「あーあ・・・二人とも、スイッチ入っちゃったよ・・・。」
「いや、でもの動き、中々すげぇぞ。お前も見習えよ。」
「えぇ?」
「ってか、、本気出してねぇし。」


山本は不服そうに言って、観戦するつもりなのか、どかりと腰掛けた。


「早く本気出してくんねーかな。」
「まぁ、それは雲雀次第だな。」


二人とも観戦モードに入っていて、ツナは大きく溜め息をついた。


(修理費も馬鹿にならないんだけどなぁ・・・また経理に怒られる・・・。)


ボスも気苦労が耐えないものである。















がらくた ワルツ








いや、あれはワルツなんて優しいもんじゃない。
ほとんど殺し合いだよ。












拍手ありがとうございます。
糧です。これからも細々と、ちまちまとやっていきますので、宜しくお願いしますね。

此の連載も終わりが見えません(web拍手連載のくせに!)。
しかし、夢主、とうとう雲雀さんと喧嘩始めちゃったよオイ。
この夢主は自由過ぎて書くのが楽しいです(笑)
完全な自己満足の話ですが、ささやかながら拍手お礼としてお納め下さい。

ではでは、拍手ほんとうにありがとうございます!
やる気の源です!!

2008.10.27
久世 桂