このお話はComing Homeの番外編です。
今休止中なので読んだ事の無い方へ。
あらすじ
身体がゆっくりしか成長しないハリーポッター世界で結構凄いお家柄の夢主。
ホグワーツを卒業して24歳の時に家の敷地内で、いろいろとあって敷地内にポートキーで現れた雲雀を保護。
ちょうど彼の両親が亡くなっているということで養子縁組を組み、雲雀と共に並盛へ移住。
現在、約30歳で雲雀のことが心配(?)で、色々と誤摩化して並盛中に編入。
ツナ達と同じクラスで奮闘中。
特述:ベル=夢主の家の執事。
Coming Home 番外編1
は突然の来訪者に些か驚きつつも紅茶を出した。
応接室のソファをすすめると、目の前の青年は「ありがとうございます」と礼儀正しくにこりと笑って腰を下ろした。
何処かで見た事ある彼にはううむと唸った。
「・・・あの時は碌に挨拶も出来る状況でも状態でもありませんでしたから、僕のことを覚えていても無理はありませんね。」
苦笑するように言われた言葉には苦笑した。
「ごめんなさい。もう少しで思い出しそうなんだけど・・・あ、ヒントくれないかしら。何処で会ったのとか。」
そう言われて彼は「クフフ」と笑った。
ここで皆様お分かりだろう。
こんな特徴的な笑い方をする彼は、六道骸だ。
何で牢獄に居る筈の彼が?と思った方は、このお話が番外編且つ拍手話ということで見逃して下さい(笑)。
「黒曜ヘルシーランドですよ。」
黒曜ヘルシーランド・・と呟いたは合点が行ったように「あぁ」と呟いた。
「あの時の彼ね。恭弥と喧嘩してたらしい。」
らしい。と言ったのは、が現場に向かったのはツナが骸をぶっ飛ばした後で、丁度彼らが連れて行かれる時だったからだ。
「クフフ・・・彼と対峙する前、彼について少し調べたんですが、貴方は彼の母親らしいですね。」
「ふふ・・よく調べたわね。って言ってもあまり隠してないけど。」
けろりと言うに骸は目を細めた。
長い綺麗な指をカップに伸ばすと持ち上げて口に運ぶ。
「紅茶はお口に合って?」
「えぇ、美味しいです。」
あら、良かったわ。と彼女はころころ笑う。
すっと、視線を彼女に合わせて彼女を探ろうにも全く彼女の内面を伺い見ることが出来無いのに骸は「おや?」と思わず声にして言ってしまった。
それに気づかない彼女ではない。
「無駄よ。全く、レディの心を覗き見しようだなんて感心出来ないわね。」
「おや、お気づきでしたか。」
「当たり前よ。んもう、恭弥ったら変わった友達を持ってるのね。」
「友達・・・ですか。」
心外だ、と苦笑まじりに尋ねると、は嬉しそうに笑って「喧嘩友達でしょう?」と言った。
「・・・貴方には負けますね。」
「まだまだ若い子に負けていられないわ。あぁ、お菓子は如何?美味しいクッキーを頂いたのよ。」
はクッキーを呼び寄せ呪文で呼び寄せると、テーブルにお皿を置いた。
骸は一連の動作を目を見開いて凝視している。
「あら?私ったらうっかり・・・」
魔法を使っちゃったわ。とあまり悪かったとは思わずに呟く。
「クフフ・・貴方はやはり興味深い。」
「私にとっては貴方の方が興味深いわ。」
はくすくす笑ってクッキーに手を伸ばした。
そしてそれを口に入れる直前に何かを思い出した様にはっと骸を見た。
「そういえば自己紹介もまだだったわね。」
「あぁ・・・僕は六道骸と申します。」
「私は雲雀よ。」
「知ってます。」
「私もよ。」
「じゃぁ、何故自己紹介を、と?」
必要無かったのでは、と思い口にするとは心外だとばかりに溜め息をついた。
「だって、他の人から得た情報で貴方のことを知ってはいたけど、私たち面と向かって話すのは初めてでしょう?自己紹介をお互い自分の言葉でするっていうのは凄く大事だと思うわ。」
「・・・やはり貴方は興味深い。」
「骸もね。」
「どうですか、こんな所に居ないで僕の所に・・・」
そう言いかけた時、乱暴に応接室が開かれて恭弥がずかずかと入って来た。
「ねぇ、君。何でこんな所にいるの。しかもと。」
その声は随分と不機嫌そうで、は苦笑した。
「どうやら今日は此処までの様ですね。」
「えぇ。」
骸は残念そうに言うと、の横に移動した。
恭弥はそれに殺気を飛ばし、駆け出そうとした。
しかし、それより早く骸はさっとの手を取ると手の甲にキスを落としてにっこりと笑いかけた。
「また、会いに来ます。」
「あら。じゃぁまた紅茶とクッキーを用意しておくわ。」
「えぇ、お願いします。」
恭弥がトンファーを振りかぶって骸に一撃を見舞ってやろうとした時には既に彼の姿は無く、開いている窓から彼が此処から出て行ったことが伺える。
「面白い喧嘩友達ね。」
「・・・あんな奴、そんなのじゃ無いよ。唯、気に食わないだけ。」
機嫌はやはり直っていないのか、恭弥はぷいっとそっぽを向いた。
「もう、そんなに拗ねないで?」
「・・・じゃぁ、あいつともう会わないでよ。」
「あら、それは無理ね。」
そう言うと恭弥はぶすっとむくれて、ソファに寝転がるとの膝に頭を乗っけた。
「だって、彼、恭弥の数少ない友達でしょう?」
「・・・違うよ。」
「ふふ・・・そうね。そうだったわね。ごめんなさい。」
はそう言って謝るが、本当にそう思っているとは到底思えない。
は苦笑しながらも雲雀の真っ黒な髪をゆっくりと梳いた。
こうすると彼の機嫌はある程度収まると知っているからだ。
「ねぇ、恭弥。私はあの時、あまり詮索しなかったでしょう?」
あの時は黒曜と一悶着あった時、つまり骸と争った時の事だ。
「でもそれは恭弥の事が知りたく無かったからじゃない。信頼していたからなのよ。」
恭弥は黙って聞いていてうんともすんとも言わない。
「恭弥が学校でどんな生活を送っていて、どんな人と交流があるのけ結構気になってるのよ。これでも。」
「・・・別に六道とは交流なんて無いけど。」
「あら、そんなことは無いと思うわ。だから、彼と話をしてみたいと思うのよ。」
「・・・・」
あらら、更に機嫌を損ねちゃったかしら、と内心思っただが、恭弥の表情を覗き込んでそうではないことを悟る。
「分かった。けど、僕のいないとこじゃ、駄目だからね。」
「・・・善処するわ。」
その時、骸が出て行った時から開け放ったままだった窓から一匹の梟が入って来た。
梟は一枚の紙切れをに渡すと、の肩に停まって身繕いを始める。
「・・誰から。」
「ベルよ。今日はあっちの家に帰るようにですって。」
あっちの家とは魔法界にある屋敷のことだ。
恭弥はむっと眉を寄せた。
「恭弥も来る?」
「いいの?」
「いいも何も・・・あそこも恭弥の家なんだから構わないに決まってるじゃない。」
「・・・そうだね。久しぶりにベルのご飯も食べたいし。」
恭弥はそう言うと、身を起こしてをじっと見た。
「とにかく、もっと危機感持ってよね。」
「あら、持ってるわよ。」
失礼ね、と言うと恭弥は溜め息をついた。
「・・まぁ、良いや。ほら、行くんでしょ?」
「えぇ。」
は杖を振ると、カップやクッキーを仕舞った。
そして立ち上がって荷物をまとめる。
そうして恭弥も荷物を纏め終えたのを確認すると恭弥の手を取って杖を振るった。
バシッという音とともに二人は部屋から姿を消した。
「ねぇ、ベル。」
恭弥のためにコーヒーを持って来たベルに恭弥は声をかけた。
ベルはコーヒーを恭弥の前のテーブルに置くと「何でしょうか」と尋ねる。
「何であんなにって警戒心が無いのかな。」
己の主のことを尋ねられてベルは困った様に微笑んだ。
「何で恭弥君はそう思ったんですか?」
「・・・。」
言いたく無いのか、それとも言う言葉が見つからないのか、恭弥は黙りこくった。
「・・・相手がマグルならば、恐らく絶対的な自信がおありなんでしょう。」
「?」
「要するに、マグルに自分をどうこうできるとは思っていらっしゃらないってことですよ。」
成る程。自信に満ちあふれた彼女なら考えうるかもしれない。
しかし、納得のいかない恭弥はむっと眉を寄せた。
「大丈夫ですよ。様は御強いのですから。」
「・・・それは分かってるけど・・・」
「心配な物は心配ですか?」
分かってるんじゃない。とベルを見上げると、彼はくすくすと笑った。
・・・何だコレ。
って自分で書いてても思ってしまいました(笑)
其の前に、拍手有り難うございます。
やる気の源です。
もし宜しければメッセージでも頂ければ張り切ります。
あ、あと拍手で書いて欲しいジャンルとか話とかあれば気軽に言って下さいね。
拍手のジャンルについては更新希望調査の結果を見て決めていますので。
では、これからも宜しくお願いします。
2008.8.1
久世 桂