注意:この話はweb拍手連載、H×Hの「拉致シリーズ」(笑)です。
1話はmainの過去web拍手の部屋に置いてありますので、1話を見た事が無い方はそちらをお読みになった方が良いかもしれません。
が、別に読んでなくたっていけると思うんで、まぁ、気が向いたら過去web拍手部屋も覗いてみてくださいね。
それでは。ささやかなお返しですが、楽しんで頂けたら幸いです。














私は今、甲斐甲斐しく洗濯物を畳んでいる。
其の手を止めて、溜め息をついた。


拉致されてはや数ヶ月。
当初は1、2週間で私に飽きてくれてさっさと解放してもらえると思ったものの・・・
あのデコっぱち。
まったくそんな素振りを見せやがらねぇ。


私はタオルの次に出て来た奴のぱんつを見つけると、それをぽいっとゴミ箱に投げ込んだ。
何が悲しくてまだまだ十代でぴちぴちの私がこんな主婦紛いなことをしなきゃいけないんだろうか。


「はぁ・・・」














泣かないことが強さでしょうか

















洗濯物を畳み終え、(ゴミ箱の中には奴のぱんつでいっぱいだ。ふん、これくらいの当てつけくらい構わないと思う)今度は掃除。
と言っても、専らクロロの無尽蔵にある本の整理ね。
アイツ本を読むのは良いけど読んだら読みっぱなしだし、本の山から本を探し出す時に掘り返した本は散らかしっぱなし。


「性格は悪い、生活能力も皆無、加えて変態。あいつって本当に顔しか無いのね・・・。」


悪態をつきながら私は本を本棚に仕舞ったり、種類別に並べたり。
でも実はこの地味な作業がそこまで嫌じゃなかったりする。
もしかして、私って、家政婦の才能あるとか!?
うーわー。嬉しくねー・・・。


「いっそのこと燃やしてやろうか・・」


なーんて、冗談半分本気半分で呟いてると、がちゃりと家の鍵が開く音がした。
奴が帰って来た!!

どこかに身を隠そうかと足を踏み出した瞬間、背後のドアが開く気配。
あいつ、どんだけ早いんだ。だって、家の鍵が開く音がしたの数秒前だよ!?


「ふっ、何だ何だ。帰って来たのが嬉し過ぎて出迎えか?」
「いや、出迎えてないって。ここあんたの部屋だし。」
「真っ先に出迎えたいから俺の部屋にいたんだろう?」
「だから、出迎えてないっつーの!」


いい加減にしろ!って思いながら言ったら、クロロは「そうか。」って言って引き下がった。
何だろう。
急に引き下がれると何か、嫌な予感が・・・。


「俺が居なかった間、寂しいからって俺の部屋で俺の残り香で我慢してたんだな。」


・・・・What!?


「だが、もうそんなことはしなくても良い。さぁ、来い!そして思う存分俺の匂いを・・・ぐふぅっ」
「えぇい!五月蝿い五月蝿い!!この変態が!!!」


私は耐えきれなくって奴の一物を蹴り上げてやった。
だって、我慢出来なかったんだもの。


「ぐぅぅっ・・・」


奴は相当なダメージを受けたのか、股間を押さえてうずくまっている。
何とも絵的に宜しく無い。
っていうか見苦しい。


「・・・そんな汚物を見るかのような目で見なくても・・・。」
「・・・キショい。」


それが止めだったのか知らないけど、クロロは項垂れてしまった。相変わらずの体勢で。


「・・・・。」


私はそれを一瞥して、部屋を出て行った。
リビングに行くと、取りあえずコーヒーでも飲もうかと思って、コーヒーメーカーにスイッチを入れる。
程なくして、こぽこぽとコーヒーメーカーが音を立て始めて、良いにおいが漂う。
換気扇のスイッチを入れて煙草を取り出し、火を付けて。
肺に煙を吸い込むと、ゆっくりと煙を吐き出した。
あ、すみません。煙草って20からだよね。
でも今19(なんと拉致られてる間に19になってしまった!!ショック!!!)だし、四捨五入したら20だから許して。


「・・・コーヒーか。ミルクたっぷりで砂糖も多めで頼む。」


いつの間にか背後に立っていたクロロが腰に手を回して来たので、その忌々しい手にジュッとやってやった。


「!!!」


あぁ、煙草が駄目になってしまった、と私は煙草を流しに捨てて、コーヒーと一緒にケーキを食べようと冷蔵庫に向かった。


「放置プレイか。煙草の火を俺の手に押し付けておいて放置プレイか。」
「放置プレイは嫌い?」
「そうだな、どっちかというと好ましくは無いな。だが、それがの愛だと言うなら喜んで放置されるが・・・。」


ねぇ、旅団の頭ってこんな変態でアホで良いの?
なんて思いながら冷蔵庫を開けると

ケーキが無い!!!


「・・・・クロロ!!!」
「何だ!Gが出たのか!?安心しろ、俺が今・・・」


なんて言って、格好良くスキルハンターなんて出しているが、全然格好良くともなんでも無い。
そして、今はそれどころでもない。


「違うわ!!ケーキ!!ケーキ食べたでしょ!!」


おいてめぇどういうつもりだ。とずずいと言ってやると、クロロは一瞬考えて、ぽむ、と手を叩いた。


「あぁ・・そういえば今朝・・・」
「・・・酷い・・・」


あっけらかんと言う彼に私はぶち切れ寸前だ。
たかがケーキ如きと思うかもしれないが、私の今現在置かれている状況ではそうもいかない。


「あのねぇ・・・アンタが駄目だって言うから家からは一人じゃ出れないし、アンタは中々私を連れ出してくれないし・・・つまり!こーんなストレスの溜まる生活の中で食が私の楽しみなの!!」
「・・・ふむ。」
「昨日、やっとのことで外出出来て、久しぶりに美味しそうなケーキを買って、今日食べようと楽しみにしてたのに・・・」
「・・・分かった。同じやつを買って来てやるから落ち着け。」
「そういう問題じゃなーい!!!」


今ここにちゃぶ台があったら私は間違えなくひっくり返しているだろう。


「・・・実家に帰らせて頂きます!」
「何故だ!」
「そのすっからかんの脳みそで良くかんがえてみやがれ!!!」



















なんて、啖呵を切ったものの、勿論一文無しの私がのこのこと家から出れる訳も無く(その上クロロからのうざったいほどの妨害にあったし)。
今は私の気を鎮める為に献上してきたケーキを黙々と食べている。


「・・コーヒーは・・」
「ミルク。」


直ぐに出て来たカフェオレに満足しながら私は綺麗にケーキを完食した。


「・・・確かに俺が悪かったのは(不本意ながら)認めるが、アレは無いんじゃないか?」


じっとりと恨めしそうに言うクロロの指差す先を見ると、クロロのぱんつでいっぱいになっているゴミ箱。
何と、あのささやかな仕返しは効いているらしい。


「可愛いもんじゃない。何か文句でもあるの?」
「・・・・無い。」


はぁ、とクロロは溜め息をついて、ゴミ箱からせっせとぱんつを取り出すとそれを洗濯機に放り込んだ。
その背中が寂しったらない。
笑えて来るのを必死に我慢して私はカフェオレを飲んだ。
しかし、どうにもこうにも、「実家に帰る」やらあのぱんつ攻撃が効き過ぎたのかしょんぼりしているクロロが何故か哀れに思えて来て。
私はどうしようかと少し悩んでから溜め息をついて立ち上がった。


「晩ご飯。何が良いの?」


態々自分から手を差し伸べてしまった。
何やってんだ、私。
でも、そう言ったとたん、顔を明るくしてこっちを見て来るもんだから、不覚にも可愛いとか何とか思っちゃったりして。


「ハンバーグが食いたい。あ、ついでに言えばも・・」
「ねぇねぇ、折角直った私の機嫌をまた最悪に戻したいの?」
「・・・ハンバーグが食べたいです。」


もごもごと言うものだから私は「宜しい」と尊大に言って、バッグを手に持った。


「さ、スーパーに行くわよ。」
「あぁ。」
「ついでに色んなもの買ってくれるよね?」
「・・あぁ。」


と、言う訳で、スーパーでは食材を買い、その横のケーキ屋さんでは大量のケーキを買って(太るぞ。なんて言われたって知るかい!)ついでに露店でアクセサリーなんてものも買っちゃったりして、大満足で家路に着いたのでした。

とは言っても理不尽な事尽くしのこの生活。
涙がほろりなんて、そんなキャラじゃない私がするわけじゃないけどさ。
いつかは抜け出してやろうと思うの。
それこそこんな私が涙する前に!








泣かないことが強さでしょうか

全く、そうだと思いたいわよ!

















拍手ありがとうございます。
糧です。
これからも細々とやっていこうと思っていますので、宜しくお願いします。


2008.9.14
久世 桂